text 2025/03/15 Sat 『こっちを向いて』ダニエル×ミシェル #創作文 続きを読む 静かな部屋。 本のページをめくる音だけが聞こえる。 明るい緑色をした澄んだ瞳が紙の上の字列を追っている。 そんな様子を、同じ色をした瞳がじっと見つめていた。 指がそっと次のページに触れる。 紙が擦れる音がする。 この部屋にはまるで無駄なものが存在しないみたいだ。 双子の兄であるミシェルはベッドの上で足を組み、膝の上に本を載せ、目はひたすらに文字を捕らえている。 双子の弟であるダニエルはそんな様子をじっと見つめている。 ダニエルはミシェルが本を読んでいるのを見るのが好きだ。 普段の、食事を摂っている姿だったり、授業を受けている姿だったり、自分に楽しそうに話しかけてくる姿だったり、そんな姿も当然好きなのだが、本を読んでいる彼には普段とは違う魅力があった。 本を読み終えたミシェルはそっと本を閉じ、ダニエルの方へ視線を向けた。 「ダニエル、おまえは僕が本を読んでいる時、いつもそうしているね」 そう言う彼はいたずらっぽく笑んでいる。 「本を読んでいる時のミシェルが好きだからね」 ダニエルは表情一つ変えずそう答える。 「この間は、お菓子を食べている時の僕が好きっていってなかった?」 「お菓子を食べている時のミシェルも、本を読んでいる時のミシェルも、同じくらい好きだよ」 「ほんとかなあ」 そう言いつつもミシェルは口元が緩むのを隠しきれていない。 これも彼がダニエルにしか見せない表情のうちの一つだ。 「今の顔も好き」 「...今日はどうしたの?」 普段と様子の違うダニエルに、ミシェルはつい視線を逸らしてしまう。 ダニエルはミシェルとの距離を詰めて、彼の膝の上に置かれた手を捕まえた。 「ミシェル、好きだよ」 そう言って触れたか触れないかわからないくらいの口付けをする。 「.........」 ミシェルは顔を赤くして俯いてしまった。 「僕も......好きだよ」 「...ならこっち向いて?」 ダニエルが俯いてしまったミシェルの頬に両手で触れ、視線が合うようにそっと顔を自らの方へ向ける。 「おまえ、ちょっと強引なところあるよなあ。そんな所も嫌いじゃないけど」 「嫌いじゃない、じゃ、嫌」 「欲しがりさんだね」 そう言うとミシェルはダニエルの隣に座り直すと、「好きだよ」と耳元で囁いてもう一度口付けを唇に落とす。 ダニエルはやっと満足そうに微笑んだ。 20190201 畳む
#創作文
静かな部屋。
本のページをめくる音だけが聞こえる。
明るい緑色をした澄んだ瞳が紙の上の字列を追っている。
そんな様子を、同じ色をした瞳がじっと見つめていた。
指がそっと次のページに触れる。
紙が擦れる音がする。
この部屋にはまるで無駄なものが存在しないみたいだ。
双子の兄であるミシェルはベッドの上で足を組み、膝の上に本を載せ、目はひたすらに文字を捕らえている。
双子の弟であるダニエルはそんな様子をじっと見つめている。
ダニエルはミシェルが本を読んでいるのを見るのが好きだ。
普段の、食事を摂っている姿だったり、授業を受けている姿だったり、自分に楽しそうに話しかけてくる姿だったり、そんな姿も当然好きなのだが、本を読んでいる彼には普段とは違う魅力があった。
本を読み終えたミシェルはそっと本を閉じ、ダニエルの方へ視線を向けた。
「ダニエル、おまえは僕が本を読んでいる時、いつもそうしているね」
そう言う彼はいたずらっぽく笑んでいる。
「本を読んでいる時のミシェルが好きだからね」
ダニエルは表情一つ変えずそう答える。
「この間は、お菓子を食べている時の僕が好きっていってなかった?」
「お菓子を食べている時のミシェルも、本を読んでいる時のミシェルも、同じくらい好きだよ」
「ほんとかなあ」
そう言いつつもミシェルは口元が緩むのを隠しきれていない。
これも彼がダニエルにしか見せない表情のうちの一つだ。
「今の顔も好き」
「...今日はどうしたの?」
普段と様子の違うダニエルに、ミシェルはつい視線を逸らしてしまう。
ダニエルはミシェルとの距離を詰めて、彼の膝の上に置かれた手を捕まえた。
「ミシェル、好きだよ」
そう言って触れたか触れないかわからないくらいの口付けをする。
「.........」
ミシェルは顔を赤くして俯いてしまった。
「僕も......好きだよ」
「...ならこっち向いて?」
ダニエルが俯いてしまったミシェルの頬に両手で触れ、視線が合うようにそっと顔を自らの方へ向ける。
「おまえ、ちょっと強引なところあるよなあ。そんな所も嫌いじゃないけど」
「嫌いじゃない、じゃ、嫌」
「欲しがりさんだね」
そう言うとミシェルはダニエルの隣に座り直すと、「好きだよ」と耳元で囁いてもう一度口付けを唇に落とす。
ダニエルはやっと満足そうに微笑んだ。
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